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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第3章 運命の邂逅
 力を入れすぎたせいで、梨花の握りしめた拳が白くなった。
 梨花は都の外れに露店を出している蒸し饅頭売りの娘だ。今は崔(チェ)海棠(ヘダン)と名乗っている。
 父ソギョンの持病の痛風が眼に見えて悪化し始めたのは二年前のことだ。元々、ソギョンは冬になると、脚腰の痛みを訴えていたのだけれど、ここ最近は一年中、身体のどこかかしこが痛いらしい。
 ―らしい、といのも、父は滅多に自分の痛さや辛さを家族にでさえ口にしないから、そういう言い方しかできないのである。それでも、痛いときは指一つ動かすのすら辛いようで、梨花は横になった父の脚や背中をできるだけ負担をかけないように撫でさするのだった。
 時は今から少し遡る。
 梨花は今日もいつものように店を出していた。兄ソルグクは貧しい家庭に生まれ育ちながらも、読み書きができる。
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