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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第3章 運命の邂逅
まだ五歳くらいの頃から、この近くにさる昔は朝廷の官僚だったという人が住んでいたという。科挙の試験管を何度も務めたことがあるというほどの学識のある人だったのに、妬みから同僚が上司にあることないこと囁き、讒言が元で退職を余儀なくされたどころか、家門は断絶、財産もすべて取り上げられた。
その人が隠棲していたのが、この近くの小さな小屋だった。その人物はそこで私塾を開き、近隣の貧しい家の子どもたちに束脩なしで読み書きを教えていたのだ。ソルグクもその私塾に通い、ひと通りの読み書きを憶えただけでなく、その師匠に
―私に今も朝廷に力があれば、是非、科挙を受けさせたいくらいだ。
と言わしめたほどの俊英でもあった。
師匠は立身には興味もなく、無欲な人柄で、貧しい子どもたちの教育に意欲的であった。が、残念なことに四十を幾つか過ぎた若さで亡くなった。梨花が崔家の娘となるほんの二、三ヵ月前のことだったそうだ。
その人が隠棲していたのが、この近くの小さな小屋だった。その人物はそこで私塾を開き、近隣の貧しい家の子どもたちに束脩なしで読み書きを教えていたのだ。ソルグクもその私塾に通い、ひと通りの読み書きを憶えただけでなく、その師匠に
―私に今も朝廷に力があれば、是非、科挙を受けさせたいくらいだ。
と言わしめたほどの俊英でもあった。
師匠は立身には興味もなく、無欲な人柄で、貧しい子どもたちの教育に意欲的であった。が、残念なことに四十を幾つか過ぎた若さで亡くなった。梨花が崔家の娘となるほんの二、三ヵ月前のことだったそうだ。