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第3章 運命の邂逅

　そのときから嫌な予感はしていた。はっきりとおかしいと思ったのは、少し経ってからだ。何となく袖に手を入れた梨花は、愕然とした。父の薬代が丸ごと全部、消えているではないか！
　痛風によく効く薬があるのは事実だが、かなり値の張るものではあった。しかし、梨花は自分たちの食べ代を削っても、その薬を欠かさず父に呑ませていた。
　梨花が今、こうして生きていれらるのも崔家の両親のお陰だ。何より、ソギョンとヨンオクは梨花に〝家庭の温もり〟を教えてくれた人だった。
　もし梨花があのまま何事もなく両班家の令嬢として育っていれば、今頃は既にどこかの両班家に嫁していただろう。家庭の温もりも本当の幸せ、家族といったものをも知らないまま、家同士の繋がりを求めて嫁がされ、ろくに知らない相手と林家の両親のように表面だけの睦まじさしか持てない夫婦になっていたはずだ。