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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第3章 運命の邂逅
もちろん、実の両親はけして不仲ではなかったし、父も母も梨花を心から愛していてくれた。それは判っている。が、父には外に側妾がいたようだし、けして母一人を守っていたわけではなかった。
両班の家の〝家族〟というものは、庶民のような温かみのあるものではない。己れの感情より格式と体面を重んじる両班には仕方のないことなのだろう。
それでも、梨花はその無味乾燥な形だけの家族、夫婦しか知り得なかったかもしれないと思うと、正直、ゾッとした。この世には愛し愛される夫婦、互いを心底から思いやる家族もいるのだと身を持って知ることができたのは幸せだったと思う。
しかし、その幸せは実の両親の死という大きな不幸の上に成り立ったものだ。だとすれば、そんな風に感じてしまう自分は途方もない親不孝なのかもしれない。
両班の家の〝家族〟というものは、庶民のような温かみのあるものではない。己れの感情より格式と体面を重んじる両班には仕方のないことなのだろう。
それでも、梨花はその無味乾燥な形だけの家族、夫婦しか知り得なかったかもしれないと思うと、正直、ゾッとした。この世には愛し愛される夫婦、互いを心底から思いやる家族もいるのだと身を持って知ることができたのは幸せだったと思う。
しかし、その幸せは実の両親の死という大きな不幸の上に成り立ったものだ。だとすれば、そんな風に感じてしまう自分は途方もない親不孝なのかもしれない。