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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第3章 運命の邂逅
「わ、判りましたよ。出せば良いんでしょう、出しますよ」
半ば自棄のように言い、掏摸が懐にねじ込んでいた巾着を放り出した。
「今後、同じことをしてみろ。今度こそ、その腕をへし折ってやるから、覚悟しておけ」
男が目一杯脅かしてやると、掏摸は蒼い顔で頷いた。
「判ってますよ。もう二度と、しやしません」
掏摸は頭をかきながら言い、人混みの中へと紛れ込み、すぐに見えなくなった。
「難儀しているところをお助け頂きまして、助かりました」
梨花は男に向かって、深々と頭を下げる。
「いや、人として当然のことをしたまでです。良かったら、お宅までお送りしましょう。また、あんなけしからん輩がいないとも限らない」
梨花は素直に男の申し出を受けることにした。この先、また掏摸に出くわすのが心配だったというより、本音は、もう少しこの男と話していたかったからだ。
半ば自棄のように言い、掏摸が懐にねじ込んでいた巾着を放り出した。
「今後、同じことをしてみろ。今度こそ、その腕をへし折ってやるから、覚悟しておけ」
男が目一杯脅かしてやると、掏摸は蒼い顔で頷いた。
「判ってますよ。もう二度と、しやしません」
掏摸は頭をかきながら言い、人混みの中へと紛れ込み、すぐに見えなくなった。
「難儀しているところをお助け頂きまして、助かりました」
梨花は男に向かって、深々と頭を下げる。
「いや、人として当然のことをしたまでです。良かったら、お宅までお送りしましょう。また、あんなけしからん輩がいないとも限らない」
梨花は素直に男の申し出を受けることにした。この先、また掏摸に出くわすのが心配だったというより、本音は、もう少しこの男と話していたかったからだ。