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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第3章 運命の邂逅
先刻までと異なり、その声には梨花ですらたじろぐような凄みがあった。
「うへぇ、い、痛ぇ」
どうやら男は先刻よりも更に力を込めたようである。掏摸は生っ白い顔を真っ赤にして、うんうんと唸っている。
「あの―、もうこれくらいで勘弁して上げて下さいませんか?」
梨花が恐る恐る進み出ると、男が小首を傾げた。
「そなたは、それで良いのか?」
「はい。この人が何の仕事をしているのかまでは判りませんけれど、手が使いものにならなくなったら、働けなくなるでしょう? それでは、この先、この人がもっと悪い道に進んでゆくような気がして。それも気の毒です」
梨花がか細い声で言うと、男は幾度も頷いた。
「おい。お前、今のこの娘の申すことをちゃんと聞いたか? 大切な財布を掏られながらも、こうしてお前の先行きを心配してくれている」
「うへぇ、い、痛ぇ」
どうやら男は先刻よりも更に力を込めたようである。掏摸は生っ白い顔を真っ赤にして、うんうんと唸っている。
「あの―、もうこれくらいで勘弁して上げて下さいませんか?」
梨花が恐る恐る進み出ると、男が小首を傾げた。
「そなたは、それで良いのか?」
「はい。この人が何の仕事をしているのかまでは判りませんけれど、手が使いものにならなくなったら、働けなくなるでしょう? それでは、この先、この人がもっと悪い道に進んでゆくような気がして。それも気の毒です」
梨花がか細い声で言うと、男は幾度も頷いた。
「おい。お前、今のこの娘の申すことをちゃんと聞いたか? 大切な財布を掏られながらも、こうしてお前の先行きを心配してくれている」