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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第3章 運命の邂逅
「何を馬鹿なことを言ってるの。あの人は私を助けてくれたのよ?」
 梨花は店を畳んで帰る途中に、一日の売り上げを掏摸に盗られたことを話し、次いで、あの男が突如として現れて巾着を取り戻してくれたのだとも説明した。
「―そんなことがあったのか」
 流石にソルグクも、あの男に対して言い過ぎたかと考え込んでいるようであった。
「どうも俺は虫が好かねえな。あんなにやけた男は、俺は嫌いだ。だが、受けた恩は恩だ。この場は感謝すべきなんだろう。とはいえ、俺は、あいつから施しを受ける謂われはない。海棠、薬を先生のところに取りにいったついでに、かかった治療費・薬代占めて幾らか訊ねてきてくれ。少しずつでも、あの男に返さなきゃな」
「判った」
 梨花が頷き出てゆこうとすると、更に兄の声が呼んだ。
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