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海棠花【ヘダンファ】~遠い約束~
第1章 燐火~宿命の夜~
梨花には、自分たちを執拗に追う男たちがニヤリと笑って顔を見合わせたのが眼に見えるような気がした。
いきなり前方を赤々と燃える焔で照らされ、梨花は眩しさのあまり額に手をかざした。
「さんざん手こずらせやがって」
見るからに凶悪そうな人相の男が二人、松明を手にして、立ちはだかっていた。
スンチョンが梨花を地面に降ろし、守るかのように男たちに背を向けて抱きしめた。
次の瞬間、梨花は何が起こったのか咄嗟には理解できなかった。肉を切る鈍い音、辺り四方に飛散した血飛沫、音を立てて倒れるスンチョンの身体。すべてがゆっくりと眼の前を通り過ぎていった。
「スンチョン!!」
梨花は悲鳴を上げ、血の海に倒れ伏す乳母に縋り付いた。
「何をするの? どうしてこんな酷いことを」
スンチョンを斬り捨てた刀が血に塗れている。その刀をまだ振りかざしたまま、傍らの背の高いほうの男が言った。
「恨むなら、俺たちじゃなく、自分の親を恨めよ」
「スンチョンが、私が何をしたっていうの」
「お前の親父は知らなくても良い秘密を知りすぎた。妙な正義感なぞ抱かず、長い物には巻かれろと見て見ぬふりをしていれば良かったものを」
「おい、喋り過ぎだぞ」
隣の背の低い痩せぎすの男が相棒を窘めた。
いきなり前方を赤々と燃える焔で照らされ、梨花は眩しさのあまり額に手をかざした。
「さんざん手こずらせやがって」
見るからに凶悪そうな人相の男が二人、松明を手にして、立ちはだかっていた。
スンチョンが梨花を地面に降ろし、守るかのように男たちに背を向けて抱きしめた。
次の瞬間、梨花は何が起こったのか咄嗟には理解できなかった。肉を切る鈍い音、辺り四方に飛散した血飛沫、音を立てて倒れるスンチョンの身体。すべてがゆっくりと眼の前を通り過ぎていった。
「スンチョン!!」
梨花は悲鳴を上げ、血の海に倒れ伏す乳母に縋り付いた。
「何をするの? どうしてこんな酷いことを」
スンチョンを斬り捨てた刀が血に塗れている。その刀をまだ振りかざしたまま、傍らの背の高いほうの男が言った。
「恨むなら、俺たちじゃなく、自分の親を恨めよ」
「スンチョンが、私が何をしたっていうの」
「お前の親父は知らなくても良い秘密を知りすぎた。妙な正義感なぞ抱かず、長い物には巻かれろと見て見ぬふりをしていれば良かったものを」
「おい、喋り過ぎだぞ」
隣の背の低い痩せぎすの男が相棒を窘めた。