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花咲く夜に
第8章 旅立



『パパ!!
パパ〜〜〜』

女の子が、畦道を危なっかしい足取りで歩いている。

農機の運転席から、貴斗が『里桜【リオ】!
そこで待ってなさーい!!』と叫ぶ。


めぐるが、
慌てて顔を出した。里桜を背後から抱き止める。
『こらっ!里桜!
危ないって言ったでしょ〜〜〜??
パパが終わるまで待ってよう?』


『お腹すいたぁ』里桜は、めぐるに手を引かれて歩く。
『ダーメ。
もうすぐお夕飯だから。それまで我慢、ね?』


『ママのいじわるー』

『いじわるじゃないよー。里桜、
明日から保育所だよ?
お友達が皆してること、
1人だけ出来なかったらどうする〜?』

『じゃ、我慢する!
お友達いっぱいつくるのー。
健【タケル】くんと一緒に行くんだ〜』
健くんというのは、里桜より1学年上の男の子。曽根崎優の下の子である。

『よし!
里桜は良い子だね』

めぐるは、
今年3歳になる娘をぎゅっと抱き締めた。



―――3月末。

肌寒い日もあるが、
春らしい陽気が増えた。


『お花みにいくー』
里桜が、
醍醐山桜に行きたいと言う。

めぐるは屈んで手を引いててくてく歩き、
数10メートル先にある小さな山を眺めた。

桜は満開に近い開花。

もたつく足取りの里桜に歩幅を合わせ、小さな手を引っ張る。片方の手は下腹に充てて………
『階段上がるよ〜。
はい、よいしょっ』
と山に続く道を進む。





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