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花咲く夜に
第8章 旅立
『里桜、お花キレイだねぇ』
『髪にかざってあげましょうー』
頂に着くと、
里桜は花びらを拾ってめぐるの肩までの髪に付けた。


『お〜〜〜〜い……』
貴斗の声がして振り返る。

袋を提げて、
山道を登って来ていた。
『貴斗さん、どうしたの?』


貴斗は胡座をかいて座った。里桜が貴斗の背中によじ登る。『休憩に飲みながら花見ようと思って…は〜、久しぶりの坂はキツいわ』
ビニール袋には缶チューハイが3缶入っていた。


『ずる〜い。
私いまアルコール飲めないのになー』
めぐるが口を尖らせると、『のになー』と里桜が真似をして口を尖らせた。


貴斗は『お前たちそっくり!』と大笑いする。






――――貴斗は、
すっかり母親然として落ち着いた表情のめぐるをチラリと見る。
里桜を産んで顔つきが柔和になった。

籍を入れてから大きなケンカを数回した。
里桜が産まれてからも、
いさかいは何度かある。
昭恵が間に入って、鎮静することもあった。
話し合いをして謝ったり、抱き合って眠ったり。

手探り状態で毎日は繰り返し繰り返し進んできた。



里桜の健やかな成長。
その発育の良さに、
驚くことばかりだ。



白い肌に、
黒い髪。
里桜は目がめぐるにそっくりだ。口元は貴斗だねと言われる。


(来年の今頃は、
4人でここに居るんだなぁ)


一緒にいることが当たり前過ぎて、言葉にするのは恥ずかしい。

だから心でこっそり呟く。

〔めぐる、愛してるよ〕
と…………

















〔おわり〕
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