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花咲く夜に
第3章 興味
『おう、
遅ぇぞ』


着替えて長靴を履き、
髪を束ねて牛舎へ向かうと、
貴斗が餌を撒いていた。


いつものままで、
何事も無かったように作業している。


めぐるは『ごっ、
ごめんなさい』
と少し遅れたことを謝罪して鍬(くわ)を持ち糞を集めた。


牛がのんびりと鳴く。
『モ〜〜〜〜〜』


晴れの日が続いていた。
6時半には朝陽が顔を出して辺りは光に包まれる。


めぐるは寝不足気味の目に光が染みて、
『いたたた……』
と瞑る。

牛が尻尾でめぐるをピシリと叩いた……


20頭居れば、
圧巻である。

牛は大量に糞をする。

する前に尻尾を振るのだ。

『あっ、ヤバい……』
そう思って離れようとしたが間に合わず、
長靴が牛糞で埋る。


嫌な顔をしためぐるを見て、
貴斗が『あはは、
バカだバカ(笑)』
と大笑いした。


ムッとする。
『バカとは何ですか?
パワハラに入りますねっ』つい言い返す。


『あ?
何だと?』
貴斗も触発されて言い返す。

『雇用主と言えど、
度を超えた嘲りはパワハラじゃないんですか?』


背中を向けたまま言い返した。

『ふん、
遅刻した従業員の言う台詞か?』
貴斗もムカッとして言葉が増えた。


『あらー、
では昨夜帰って来なかったのは就業放棄に入るんじゃないですかねぇ。
牛は生き物ですし、
24時間何が有るか分かりませんし』


『………個人的な用事であれば、
時間外は自由だ』


『個人的……
では、一昨日のはセクハラですね?』


ダメだ、
言葉が止まらない。

頭では分かっているのに。

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