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花咲く夜に
第3章 興味
『へ?』


『いつか、教えて。
あなたの事情を』

目が合った。


『……面白くはないよ?』舌を出す。

『そりゃそうですよ。
芸人じゃあるまいし…』
めぐるが嫌な顔をする。



――――めぐるが『教えて』
と気持ちをストレートに出したのを、
貴斗は真摯に受け止めた。

性格上、茶化すようにしか返せない。


だけど、
貴斗は………
温かい感情が体に浸透していくのを感じた。

(やっぱりこの女、
何か違う)


昨日着信が多かったことも口にしない。
責めもしない。
貴斗は、
めぐるが様々なことを〔敢えて言わないようにしている〕と薄々気づいていた。

(でも、
ちゃんと話さないとな。
この人のことも知りたいし)


貴斗は隣でお茶を飲む女を見て、
眩しさに目を細めた。


『今日はバイトは休む』

『あ、はい。
構わないんですか?』

『昨日夜にTELした。
社員さんがほら、
あの青い屋根の一軒家のヒトなの』
貴斗は数十メートル先の青い小さな屋根の家を指差す。


『アンタのこと、
美人だっつってたよ』

『もしかして、
小さな女の子がいる曽根…曽根崎さん?』

『あれ、
話したの?』

『うん。奥さんだと思う。
私より少し歳下っぽい、
茶髪ボブの可愛い人』


『あ、それ奥さんの美園【ミソノ】さん。
女の子は杏奈ちゃんね』


『杏奈ちゃんかぁ〜〜〜』めぐるは以前農道でバッタリ会った小さな女の子を思い出して笑った。

トコトコて歩いきて、
転んだのだ。


めぐるが起こしてやると、ママらしき女性が『すみませ〜〜〜ん』
と走ってきた。
それが美園さんだ。

この近辺は農道ばかりで見晴らしが良い。
だから子供の1人歩きも遠目からでも見守れるのだ。溝が危ないけれど、
きちんと段差があり力がないと上がれないように作ってある。

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