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君が泣かないためならば
第3章 は
「啓、もういいよ」
「何で?恥ずかしい?」

恥ずかしいのは、私じゃなくて啓じゃないの?
女性の髪を触りながらこんなところに立っているなんて。

「よし。とれた」

息を詰めて取ってくれていたのか
フーッと息を吐きだした後ににっこり笑った。

そのあと外した髪をゆっくりとなでる。

「よかった。ごめんな」

ごめんって・・・
私がいきなり振り向いたから引っかかったのに。

「ね。啓」
「ん?」

「啓のこと愛してる、とはまだ言えないけど。
お互いを同僚から一歩前進させるためにもっと知り合いたいと思う」

「明日香、それって・・・」
「うん。そんな形からで良かったら付き合おうか」

見る見るうちに啓の顔が、笑顔でいっぱいになる。

「ほんとに?」

そういうと私の返事を待たずにぎゅっと私を抱きしめた。

「ちょっ、ちょっと!啓!ここ会社の前!」

そういう私の声も笑っていた。
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