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第1章 キ

仕事帰りはいつものように同期の3人で居酒屋に寄る。

相変わらず忙しい仕事は居酒屋での軽い愚痴と
軽い酔いで浄化されて、また明日も頑張るかと思わせる。

「紗江子ちゃん、秘書課はどんな感じ？」
「4月での人事異動で新しい役員の調整が行われているわ。
なんだか皆ピリピリしててやりにくいわよ」

「もう、人事異動の季節か」

あの男と別れて1年になろうとしていた。

私の発した人事異動の発言の裏を2人が読み取って
複雑な顔をする。

「明日香、重田さんのことはもういいんだよね？」
それは確認というよりも深い探りで。
1年前の私の落ち込みを知っているこの2人は
私の今の気持ちを知りたがった。
「うん。もう1年も前なんだよ？」

嘘だ―――

心のどこかで叫んだ気持ちを力づくで封印する。

「そろそろ新しい彼でも作ろうかな、って思ってる」
「うん。それがいいよ」

私の心を見透かしたように、少し寂し気に紗江子ちゃんが笑った。

「カッコいい男、いないかな～」
そういった私に紗江子ちゃんは笑って
「だよね！凄くいい男を探そう」
といった。