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君が泣かないためならば
第7章 い
自販機コーナーでうつむいて目をつぶって私を待っていた重田さんが
私たちの気配で顔をあげる。

「森川君」

重田さんはそう呟いた後、気を取り直して
「どうした?」
と聞いた。

「重田さん、あんたたちのN.Y.チームがあの数字を見落としていたことは
すでに見当が付いていたんだ」
「・・・・」

「事もあろうにマスターファイルを書き直そうとしたな?」

そう詰め寄る啓に重田さんはしらを切る。

「言っている意味が分からないな」

「明日香にこんな事させやがって」
「俺は、強要してないよ」

表情から重田さんが開き直ったのが分かった。

「明日香が、してくれるって言ったんだ」
「どんなふうに脅した?」

啓は、ものすごく怖かった。

いつもの穏やかな啓からは想像も出来ないような声だった。

「脅してない。提案したんだ」
「・・・・」
「やり直そうって、な」

「え・・・・」

「な。明日香?俺と一緒にN.Y.に行こう」

「明日香・・・」

さっきまでの怖い雰囲気を一気に沈めて
啓は静かな無表情の仮面をかぶった。

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