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第6章 逮捕へ

父方の実家や田畑はすべて借金のカタに取られており、兄は母の家に飛び込んで来たのだが、借金は全て母の住所電話番号で登録していた。

兄は借金を踏み倒し続けたが、結局、母方の祖父母の人に貸していた大根畑を売ることで一部の借金を返済した。

当時は金融会社側の甘い審査、強引な取立てはまだ社会問題になっていない。
世間は借りたものは返すという考え方で、「過払い金」という言葉が世に出るのは十数年後である。

兄の中では、結局は親類が払ってくれるという認識で自己破産するまで、中古であるが高級セダンをローンで購入したり、パチンコをするために借金を繰り返した。

母の様子を見に実家に戻ってきた大学生の向樹に兄は「俺の部屋に入るな！」と一喝した。
向樹の部屋は完全に兄の部屋に変わっていた。