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雪の華~ Memories~【彼氏いない歴31年の私】
第3章 LessonⅢ 悪意ある噂
「―大丈夫ですか?」
 吉瀬が気遣うように輝を見た。
 輝は吉瀬にこれ以上迷惑をかけないように、努めて明るい笑顔を作った。
「大丈夫です、私なら。あの程度のことなら、もう慣れてますから」
 その言葉に、吉瀬が息を呑んだ。
「心が強くなきゃ、生きてはいけません。大丈夫です、私、三十一年間、こうしてずっと生きてきたんです」
 言葉とは裏腹に声はわななき、眼尻から熱い滴が流れ落ちた。吉瀬が涙に気づいたのかどうかは判らない。鈍感な男ではないようだから、気づいたとしても不思議はないが、彼にはそれを表に出さないだけの分別はあるはずだ。
 気のせいか、彼は泣いている輝の方は見ず、敢えて正面を見つめて歩いている。しばらく二人は無言で並んで歩いた。
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