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雪の華~ Memories~【彼氏いない歴31年の私】
第4章 LessonⅣ 忍ぶれど
 そこで輝は洟をすすり上げた。
「私ったら、何を言ってるんだろう」
「もう、何も言わなくて良いから」
 吉瀬の声が間近で聞こえたかと思うと、ふいに強く抱きしめられた。
「もう何も言わなくて良い」
 吉瀬の腕の中はいつも温かい。ほのかな雨の匂いが漂ってきて、輝はこの上ない安心感に包まれた。まるで迷いはぐれた雛がやっと探し求めてきた親鳥の翼に抱かれたような気がする。
 確かな体温と匂いを感じた瞬間、緊張しきっていた心の一部がふわりと解(ほど)け、止まりかけた涙がまた眼尻に浮かぶほど安心する。吉瀬の両眼にも光るものがあった。
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