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雪の華~ Memories~【彼氏いない歴31年の私】
第4章 LessonⅣ 忍ぶれど
「髪に雪がついていたから」
 その科白で、吉瀬が髪に積もった雪を払ってくれたのだと判った。
 と、輝の中で何かが騒いだ。雪の中の教会、隣に立つ見たこともない男、そのひとがそっと手を伸ばして輝の髪に舞い降りた雪片をつまみ上げた。今夜の出来事にとてもよく似た場面にどこかで遭遇したことがあるはずなのに、それがいつどこでのシーンなのか思い出せない。
 喉に小骨が引っかかったように、思い出せそうで思い出させないもどかしさに、輝は顔をしかめた。
 十二月の雪の夜はしんしんと冷える。気温は一段と下がったに違いない。輝はコートの襟に埋めるように首を縮めた。途端に男らしい清潔なコロンの香りが鼻腔をくすぐり、輝をすっぽりつ包み込む。
 大好きな聡の匂いに包まれているのは、とても幸福だ。
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