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雪の華~ Memories~【彼氏いない歴31年の私】
第5章 LessonⅤ キャッツ・アイにて~孤独なピアノ~

二曲目が終わるやいなや、一瞬訪れた静寂を拍手が破った。輝は白い頬を染めて立ち上がる。あたかもピアニストが観客に向かってするように、優雅に腰を折り、一礼した。 いや、今夜、確かに輝はピアニストであり得た。もちろん、観客は聡一人だ。輝はたった一人の観客のために心のすべてを注いで一生に一度の演奏をし、また聡も彼女の演奏に誰よりも真摯に耳を傾けてくれた。
輝の視線が真っすぐに聡を捉えた。たった今、信じられないほど素晴らしい音を紡ぎ出した白い手がまた動き出す。―かと思うと、次の瞬間、聡の整った顔に烈しい驚愕が走った。
「輝さん? 何を」
輝は既にブラックの通勤用のスーツのジャケットを脱いでいる。その下に防寒のために着た紺のカーディガンを脱いでいる彼女を、聡はまるで惚(ほう)けたように茫然と見つめていた。
輝の視線が真っすぐに聡を捉えた。たった今、信じられないほど素晴らしい音を紡ぎ出した白い手がまた動き出す。―かと思うと、次の瞬間、聡の整った顔に烈しい驚愕が走った。
「輝さん? 何を」
輝は既にブラックの通勤用のスーツのジャケットを脱いでいる。その下に防寒のために着た紺のカーディガンを脱いでいる彼女を、聡はまるで惚(ほう)けたように茫然と見つめていた。

