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雪の華~ Memories~【彼氏いない歴31年の私】
第5章 LessonⅤ キャッツ・アイにて~孤独なピアノ~
 輝はなおも窓ガラスに額を押し当てるようにして外を見つめる。空が近い。地上の風景―ビルや家々が箱庭のように見えた。
「町のイルミネーションが光の帯みたいに見える。まるで宝石箱をひっくり返したようね」
 町の灯りの一つ一つに人の営みがある。あの灯りの下では家族や恋人たちが寄り添い、幸せなクリスマスの夜を過ごしていることだろう。
 今ほど自分以外の存在を愛おしいと思えたことはなかった。現金な話かもしれないが、それは多分、今、輝自身が幸せだからに違いない。
「聡さん、私、とっても幸せ。多分、生まれてから三十一年の中でいちばん幸せなイブじゃないかしら」
「―」
 聡が息を呑んだ。彼が急に黙り込んだので、輝は俄に不安を憶えた。
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