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雪の華~ Memories~【彼氏いない歴31年の私】
第1章 LessonⅠ 憂鬱な夜には
 しかし、当然ながら、雪は忽ち儚く溶けてしまう。不思議な感覚だった。これは夢だと十分判っているのに、手のひらの温かさで雪は待つ間もなしに溶けてゆく。
 見知らぬ男の傍にいるのに何の不安もないのは、これが夢と判っているからではなく、むしろ、誰かが側にいてくれることが、こんなにも幸福感を呼び起こすものだと判ったからだ。
 見たこともない、顔も知らない男と二人で雪の中に佇んでいるだけ。しかも、どういうわけか判らないけれど、二人とも結婚式のときの花嫁花婿のような格好をしている。これだけ現実からかけ離れた夢もないだろうに、不思議と違和感はなく、しかも、雪が体温で溶けるというリアル感すら伴っている。
 雪はただ降りしきり、輝の上に落ちてくる。眼前の教会には灯りが灯り、白銀の中にぽつんと建つ小さな教会は、よく絵葉書か何かで眼にするような幻想的でメルヘンチックな光景だ。
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