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遅咲きのタンポポ
第10章 格差と温度差
再びシャッターが閉まり、車から降りる。
ガレージの奥に、直接お家に入れるらしい扉があった。

「梶井さん、父さんに報告したらもう帰るんでしょ?」
「そうですね。先程電話した限りでは、ほかに御用はなさそうでしたので。」

「じゃ、これ。持って帰って。」

武井さんはエシレの保冷バッグを一つ梶井さんに渡す。

「いえ、いただけません。」

生真面目に辞退する梶井さんに、

「休み返上で朝から迎えに来させちゃったんだから、奥さんと、娘さんへのお詫び。」

梶井さんは困ったように笑う。

「…ありがとうございます。祥悟さんの細やかさは社長譲りですね。私などはいつも感服致します。」

もう一度深く頭を下げ、

「ありがたく、頂戴します。」

と言う梶井さんに、武井さんは、

「大袈裟だなぁ」

と苦笑した。
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