この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
素直になれなくて
第9章 愛の行方
「悠里ちゃん、もう上がる時間よ?」
「あ、はい。」
店長の門倉は、悠里に声をかける。悠里は、最後のお客さんにお惣菜を渡しレジを閉めると、奥のロッカーへ入って行く。
「悠里ちゃん、また痩せた?ちゃんと食べてるの?」
「食べてますよ。モリモリと。」
悠里はニッコリと笑った。
「悠里ちゃんに来てもらう様になって、うちの店、売り上げ上がったから助かってるんよ。」
店長の門倉は、余った惣菜をパックに入れて悠里に渡す。
「これもモリモリ食べなさい。体が資本なんだから?」
「いつもすみません。」
悠里は、頭を下げると店を後にし、自転車を走らせた。
「遅れちゃう、急がなきゃ。」
悠里は、自転車を漕ぐ足を少し早めた。

浅井は、飯島社長を訪ねていた。
「浅井くん、本当に久しぶりだね。」
「はい、ご無沙汰しています。」
浅井は、逸る気持ちを抑え、出されたお茶を一口飲んだ。
「飯島社長、いつ、引退なさったんですか?」
「あの事件の後、すぐだったかな。本当は店自体を畳もうと思ったんだが、職人達に止められてね。秘書をやっていた中林に後を譲った。社名も変えてね。」
浅井は、言葉がなかった。
この人もあの事件の被害者なんだ。
長年続いた店を、身内に継がせられなかったのは、きっと悔いが残っただろう。
「そうそう、山城さんの話だったね。私もあまり外へは出ないんだが、この前夕方に公園で見かけてね。雰囲気が変わっていたから、声を掛けようか迷ってしまって。」
浅井は、黙って社長の話を聞いた。
「その、姿を晦ましたのは、訳があったのだと思うよ。だからそっとしておくのも……」
「無理です。放ってはおけません。」
飯島社長の言葉を遮って言った浅井の言葉に、社長は優しく微笑んだ。
「覚悟を決めてるんだね。」
「はい。」
飯島社長は、地図を書いた紙を浅井に渡した。
「以前見かけたのは16時過ぎ頃だったから、今から行けば会えるかもしれないね。」
「ありがとうございます。」
浅井は紙を手にすると、飯島社長に頭を下げた。
「君達には、本当に迷惑をかけた。すまなかった。」
「社長の所為ではありません。あの事件は誰の所為でも……」
そう言って、浅井は頭を下げ、社長の家を後にした。
/147ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ