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素直になれなくて
第5章 恋人
「なんなんですか?事情って?」
給湯室に入っていった悠里を追いかけて、田坂がやって来る。
「昨日、浅井が行きつけの呑み屋さんで酔い潰れて。」
田坂は、悠里の腰に手を回して抱きついて来る。
「店主から連絡が来たの、何とかしてくれって。」
「なんで、悠里先輩なんですか?」
それは、何時も一緒に飲みに行く事が多いからで…
急に田坂は悠里を壁に押しやった。
「泊まったんですか?浅井さんの部屋に…」
「…うん……」
「何されたんですか?」
「なっ……何にもないよ……」
悠里の顔が、ピンクに染まるのを見て、田坂の眉が上がる。
「こっ…怖いよ……田坂くん…」
「キスされて、その先少しされたけど、何にも無かったらしいぞ?」
突然、声がして悠里も田坂も振り返る。
「あ…浅井……」
悠里は顔が真っ赤になった。
「俺は酔ってて、全く覚えて無かったけどな?」
あー残念だぁ。と浅井は吠えている。

「悠里先輩…」
田坂は浅井が見てるのも構わず、悠里の顎に手をやると、唇を重ねた。舌を入れて悠里の舌を絡め取る。角度を変えて、何度も吸い上げる。
悠里は、田坂の肩を叩く。その手を取られ、押さえ込まれた。互いの唾液が混ざり合う。悠里から力が抜けていく。
腰に手を回して、きつく抱きしめる。
浅井は肩を竦めて、ニヤニヤしながら、給湯室から出て行く。
「悠里先輩……誰にも触れさせたくない。」
悠里は、頬を上気させながら、何度も降ってくる田坂のキスを受け止めた。
「……田坂くん…」
「今すぐ……抱きたい…」
田坂は、悠里の髪に顔を埋めた…首筋に舌を這わせる。
コンコン
さっき出て行った浅井が立っていた。
「悪いな?お楽しみのところ……三軒茶屋店、トラブル発生だ。」
「え?」
悠里は、蕩けた表情をして、浅井を見た。
浅井は、顔を赤らめた。
「そんな顔してると、襲うぞ?」
「もう、馬鹿っ」
田坂は、不安そうな顔を、悠里に向ける。
「大丈夫。そんな顔しないで?」
悠里は、田坂の頬にキスをすると、給湯室を後にした。
田坂は、顔を真っ赤にさせた。
「悠里先輩、気を付けて!」
田坂の言葉に、悠里は優しく笑うと、浅井と三軒茶屋店に向かった。
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