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素直になれなくて
第5章 恋人
田坂は、浅井に肩を組まれ、頭をワシワシ撫でられた。
「よくやった!田坂、偉い!」
田坂は、役に立てた事が、素直に嬉しかった。
「今回は、本当にすみませんでした。」
謝る田坂に、浅井は言った。
「ま、いい勉強になったと言うことで。な?」
「はい。」
悠里はそんな2人のやり取りを、笑顔で見つめた。
ホテルを後にして、浅井は部長に報告するため、社に戻ると告げた。
「報告なら、私も…」
そう言いかけた悠里の言葉を田坂は遮った。
「悠里先輩は、ムリしないで、帰って休んで下さい。」
「お前は、自分の体調にも鈍感なのか?」
「え…何か、おかしい?」

「顔色、メチャメチャ悪い。」

浅井と田坂に同時に言われ、驚いた顔をした。
「田坂は、悠里を送って行け。」
「え?」
「フラフラしてんの1人で帰すわけにもいかんだろ?」
そう言うと、浅井はニヤニヤ笑った。
「ありがとうございます。」
浅井と駅で別れ、悠里と田坂はタクシーでマンションに向かった。
「テーブルの下で、何されてたんですか?」
「え…気付いてたの?」
悠里の瞳が潤んで、不安そうな顔を田坂に向けた。
「そんな顔、しないでください。後で若社長の事忘れるくらい可愛がってあげますから。」
悠里は、頬をピンクに染めると
「そんな事、お願いしてないよ?」
田坂は眉を寄せて悠里を見つめた。
「悠里先輩が良くても、俺が良くない。」
田坂は、悠里の手を握る。
「昨日は浅井さん。今日は若社長。もう俺、我慢出来ません。」
「もう、馬鹿っ。」
悠里は、田坂の肩にもたれかかって頭を預けた。
「……あの……田坂くん……」
「どうしました?」
田坂は頬をピンクに染めて、俯く悠里を見つめた。
「……私…田坂くんの事……好きだよ。」
田坂は、目を丸くして悠里を見つめた。
「悠里先輩…それって……」
悠里は潤んだ瞳を田坂に向けた。
「オレの彼女になってくれるの?」
少し戸惑って、それからゆっくりと頷く。
「悠里先輩……嬉しい……」
田坂は、悠里の肩を強く抱いた。
「今日は、帰さないよ?」
嬉しそうに悠里を見つめ、頬にキスを落とした。
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