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素直になれなくて
第5章 恋人
「これが悠里ちゃんの味なんだ。たまらないね?」
……狂ってる……
「食事、続けないとバレちゃうよ?」
そう言いながら、若社長は悠里の蕾をまた刺激する。
「凄いね?濡れ濡れだ。ここ、僕の舌で綺麗にしてあげたいよ。その後は、指で掻き回して。ああ、それよりすぐに挿れて欲しい?」
悠里は、恐怖で身体が震えて行くのを止められなかった。

「なんか、悠里先輩、おかしくないですか?」
最初に気が付いたのは田坂だった。
「顔、赤いな…」
「浅井さん、テーブルの下。」
テーブルに掛けられたクロスが、やけに揺れている。
「なっ!アイツっ!まさか…」
「止めましょう。」
2人が立ち上がろうとした時だった。
若社長が立ち上がると、悠里の腕を掴んだ。左手には部屋の鍵が握られている。
浅井と田坂が駆け寄ろうとした時、車イスに乗った初老の男が入って来た。
「悠里さんを離しなさい。諭。」
聞き覚えのある声に、悠里は顔を上げた。
「なっ、親父!なんで此処に…」
「お前が、馬鹿な真似をしていると教えてくれた人がいてね?」
「飯島社長…」
悠里は、泣きそうになった。
「悠里さん、息子が大変失礼をしました。納品の件は、既に手続きをしたから、安心しなさい。」
「ありがとうございます。」
悠里は頭を下げた。
「飯島社長!」
「おお、浅井くん、本当に申し訳なかった。」
「退院されたんですか?」
「はは、仮退院だよ。そちらの人に頭を下げられてね。息子の馬鹿な真似を止めに来たんだよ。ね、田坂くん。」
浅井と悠里は田坂を見た。
「いや、自分の所為でこんな事になったので、何か手はないかと考えて…病院を調べて、無理を承知で頼みこんだんです。」
「悠里さんの身に危険が及ぶと、本当に真剣で…お役に立てて良かったよ。」
「田坂、お前やるな?」
そう言って、浅井は田坂の肩をポンポン叩いている。
「飯島社長、ありがとうございます。」
「今後の打ち合わせは、私の秘書と連絡を取って下さい。息子は、暫く社長職から降ろして、もう一度勉強させるよ。」
そう言うと、飯島社長は諭を連れて、ホテルを後にした。
悠里は安心して、身体の力が抜けた。
「悠里先輩、大丈夫ですか?」
「悠里、しっかりしろ。」
「……怖かった……」
田坂と浅井に支えられ、悠里は何とか立ち上がった。
「田坂くん……ありがとう。」
「役に立てて良かった。」
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