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飼育✻販売のお仕事
第4章 従業員面接②・ゆめかわ実業家令嬢〜りつき〜
「新崎さんは従業員ご希望ですよね?業務内容はご理解いただけていますか」
「はい。人間をお世話するんですよね。実家にそういうお仕事の人がたくさんいたので、ああいうことでしたら出来ると思います」
「──……。立ち入ったことをお訊きして良い?ご実家、風俗か何か?」
「えっと、……」
聞き馴染みのない単語につまずいた。りつきは思考を巡らせる。
風俗。
高校の授業で聞いたことがある。その時代の文化や風習を意味している単語のはずだ。
間違いはない。りつきの父親は実業家だ。あらゆる事業を展開し、街の文化に貢献している。
「はい、多分、風俗です」
「そう。では次の質問。好きな動物は?」
「ペガサスとユニコーンとウサギさんです」
「──……。……そ、そう」
面接の結果は採用だった。
りつきが伊澄の暮らしてるマンションの部屋に転がり込んだのは、四月の暮れだ。何もかも平均的にこなす親友が、一年勤めた職場を解雇されていたのを聞かされたのは、その夜である。
貯金が尽きるまでは時間の問題だ。
伊澄は言った。りつきも所持金をほぼ持たないで家を出てきた。服飾品だけは家政婦に頼んで送らせたものの、元来、請求書も全て父親が対応するクレジットカードでやりくりしていた。
そこで新しい職を探す伊澄に付き合って、インターネットをしていたところ、二人してここの募集に目を留めたのだ。
人間を世話する業務はりつきの想像を外れていた。
「一人一人、シャワー室で身体を洗ってあげることも、従業員の仕事です。膣や肛門、アクメは特に清潔な状態を保って下さい。餌は品種によって違います。高額ペットは最善の体型を作るために、熱量、栄養成分にこだわっているから、配給の際、間違いのないように。それから技術、感度は最大限に磨きをかけて。手順は明日から説明します」
「はい、質問です」
「何?」
「人間のお世話ですよね。スケジュール管理やお洗濯はしなくて良いんですか」
「日々の生活は、大体、全員同じ。衣服はランジェリーとタオル以外を禁じているから、週に三回、取替え業者に任せているわ」
りつきの実家には家政婦や執事が勤務している。彼らを見習うだけだと考えていたが、ここの住人は、シャワーも食事も、世話されなければ出来ないようだ。