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飼育✻販売のお仕事
第27章 真相、そして真相
「ふぁみりあ」の並びの一角に、覚えのある自家用車が停まっていた。
運転席にいた人物は、りつきを見るや後部座席の扉を開いて声を上げた。
「お疲れ様です」
「結野は?」
「来ても意味がないって」
「了解」
数十分前、りつきの行動を先読みしていたかのように待ち伏せていた、元執事──…いよいよ苛立ちが許容量を超えかけた時、続いて出てきた伊澄が三郎を取り押さえた。
出際にりつきは伊澄に問うた。だが、伊澄は三郎を帰らせたあと、りつきを追わない意思を示した。
「田口も帰ったし」
「そうですか」
「…………」
りつきは、いつにも増して口数少なくなっていた。
「新崎が気にすることねぇぜ」
「──……」
「新崎真正はああいうやつだ。娘のお前には悪いが、あたしも良い思い出はない」
「……そろそろ、行ってきます」
「内側から鍵、かかってたけど」
「…………」
里子の話によると、りつきの体裁ばかりに執着している父親は、あるところではまさしく王者同然に振舞うという。
井靖鈴花──…忘れ難い、里子の最愛の人。
鈴花が消息を絶ったのも、真正の暴虐が発端だった。