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飼育✻販売のお仕事
第29章 ペットになりたい
「そう」
華奢でありながら育ち盛りの少女の名残のある健康的なウエストに、里子の腕が自ずとまとわる。
「そ、うです……」
パステルピンクの仔ウサギが、数秒、もじもじと両手をいじった。
ややあって、毅然とした眼差しが、里子を抱いた。
「言ったじゃないですかぁ……」
…──ペットになりたい。ペットで良い。
「ダメ」
「えっ?!」
「冗談じゃないわ。貴女みたいなペットなんて」
「そんな……っ」
「りつきは私の愛する人。どうしようもなかった日々から、強引に引きずり出してくれた人」
「里子さん……」
「そんな人と保護庇護の関係になるなんて、不自然じゃなくて?」
歪みかけたりつきの顔が、一瞬にして明るんだ。
否、歪んでいる。いくら里子でも胸が迫るような想いを湛えて、りつきの目はたゆたっていた。
「うぅぅ……大好きですぅぅ……」
十四年越しに理解(わか)り合った恋人同士は、公共の面前でまであるまじき想いを絡め合う。
人だかりの向こうでは、果てないような情事のショーが続いている。誰もが淫らな舞台に夢中だ。里子達がこれだけ私情に耽っていても、見向きもしない。
理性という名の本能に蹂躙される二人にとって、都合が良かった。
飼育✻販売のお仕事─完─