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飼育✻販売のお仕事
第29章 ペットになりたい
「博愛主義をやめたわけではないからよ」
恵果のたとしえない眼差しが、伊澄に切なげな秋波を送った。
「──……」
「一対一の関係が悪いこととは言わない。たった一人を愛して、他に何も見えなくなるのは素晴らしいし憧れる。だけど私は、それが個人を縛りつける欲望なら軽蔑する。相手を管理し、自分を制する。私は愛する人が他の人間と親しんでいたら嬉しいわ。そうね……例えば茅中さんなら、恋人を理由に友人との約束もすっぽかすような人に魅力なんて感じられる?」
里子は返答に戸惑った。恵果の指す友人には千般あるからだ。
正面の淫らごとに傾倒しながら、今宵も尚、胸奥では恵果の指を、唇を──…求めている女達とて、彼女からすれば友人達だ。
「恵果さん。そういう話は、店長とりんには刺激が強い」
「結野さん……」
「それに、りんは飼われたい願望あるし?」
「っ……!!」
りつきが伊澄に噛みつきかけた。
実際には、愛らしい唇が顫えただけだ。だが、ともすれば不都合なことを漏洩された人間同様、大きな目は必死になって、同居人に何やら訴えかけている。