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飼育✻販売のお仕事
第8章 少女給餌〜りつき〜
あるところに平凡な女がいた。
平凡な女はその身性に相応しく、多くの人間がかしずいていた。
女は孤独と無縁だった。狭苦しい仕来たりに倣わねばならないのを除いては、何一つ不自由なく暮らしていた。知識で得ていたような愛情を良人に注ぐことはなかったにせよ、世間がかの男を愛せば幸福を得ると教えた所以、女はそれに従っていた。
ところがその令閨は、男との愛の記念品が小学二年に上がった時期から、優しい胸を痛ませるようになった。
男の浮気だ。
女は笑わなくなった。
生来の女の炫耀に飢えたのは、彼女より、彼女をとり囲んでいた人間達の方だったのではないか。
紅葉が街を染める季節、女は使用人の一人を呼びつけた。若い家政婦は女を実の姉のように慕い、女も彼女の赤心を頼りにしていたからだ。
これが、あの人が愛人にしているという方のお住まいの住所。
女は家政婦に胸の内を曝け出し、恋人に良人を返すよう要求する代理を頼んだ。
女を盲目的に慕っていた家政婦は、女をあるべく健やかなあるじに戻さんと、かたきの住処へ足を向けた。…………