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淫ら
第16章 16
その日、家に帰ってからも私はずっと心ここにあらずといった感じだった。
知らぬ間に圭一のことを考えていて、ふと我に返るということばかり繰り返した。

味わったことのない快感の余韻もまだ残っていたし、
触れた手の優しさや抱き合った温もりも愛おしく思えた。

それにお互いを「羽鳥さん」「梨恵さん」と呼んでいたことも
「一見距離感があるのに、している行為はいやらしさに満ちている」
というギャップが、私の気持ちを高揚させる一因になっていた。

「とにかく夫には何事も知られないよう、いつも通り接しておかなければ。」
気怠さの中、私は夕食の支度を始めた。
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