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サイドストーリー5
第24章 悠久の恋の果てに
会社のエントランスで待っていると
退社の人を縫うように大久保さんが待ち合わせ場所まで急ぎ足で来た。

「ごめん。待たせた」
「いえ。大丈夫です。それより・・・良いんですか?この時間に帰って」
「大丈夫。算段は付けてあるから」
「はい」
「じゃぁ、行こうか」

そのあと大久保さんに誘われて、旧大久保男爵邸があった赤坂まで来た。
あたりはすっかり変わっていて。
あのころの大きな屋敷や敷地は見る影もなかった。

それでも記憶をたどって、恐らくこのへんだと目星を付けた裏路地で
2人で空を見上げる。

今日は七夕だ。

「100年、経ったけど。美緒。キミと再び出会えたことを
この場所で100年前の僕たちに報告したかったんだ」

大久保さんは自分のことを無意識に「僕」と言った。
普段は「俺」なのに。
前世の記憶を呼び醒ましているのだろう。

「恋焦がれて、恋焦がれて。それでも一緒になれなかった100年前の僕たちに。
今こんなに幸せだと教えてやりたかった」
「はい」

「100年分、大切にするよ」
「は・・・い」
「これから先の100年も一緒に過ごして行こう。
今の俺たちには、それが許されている」

許されている―――

今の時代の当たり前が、
どれほど私たちにとって幸せなことなのか。

私はぎゅっと大久保さんを抱きしめた。

みさを。今の私は幸せだよ。

私も心の中で100年前の私に報告した。

END*****

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