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今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡
第2章 バレンタインの事情♡その①…千隼…
鈍い音を立てて床に崩れ落ちる葵くんの姿に呆気に取られていれば、その間にアタシの手元からイチゴが入った桐箱が取り上げられて、アイスクリームみたいに甘い香りが上から降り注ぐ。
「あー、寒かったっ♡ちーちゃん温めて♡」
「ん──っ!!」
瞬く間にどこかへ吹っ飛んでいった甘い空気。
名残惜しむ間もなく、乱入した彼の腕でしっかりカラダをホールドされ、キンキンに冷えた手を早速ニットワンピースの首もとから差し込まれる。
「っ聖…く!!」
「んー、暖かい♡」
「ッ…たいな、聖!!」
「あー、幸せっ♡」
って…無視かっ!!
そう、帰宅早々葵くんを軽く蹴り飛ばし、当たり前のようにアタシで暖をとるのは聖くんだ。
濃いグレーの英国調なグレンチェックのハイブランドスーツをオシャレに着こなし、
ビスクドールのような面立ちから醸し出す知的な雰囲気と、滲み出る嫌味のない品。
"聖くん×スーツ=反則"
今日もそんな方程式を完璧に成立させ、ふわふわの髪と同じ栗色の瞳で無邪気に笑う聖くん。
今朝もその姿を見ているはずなのに、おかしいな…
オシャレスーツが似合いすぎるせいなのか、朝から彼に心身ともにへっとへとにされたせいなのか、胸がキュンと甘い音をたてる。
それにしても外はよっぽど寒いのだろう。彼の手の冷たさに思わず肩を竦めた。