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他人の妻、親友の夫
第6章 超える一線
「理依……」

秋彦が呼び掛けると彼女は躓いたようにその身を夫の胸に預けた。
そして百瀬夫婦がいることも気にした様子もなく唇を重ねた。
いや、唇だけではない。
お互いの舌を行き来させあう深いキスをしていた。

不覚にも、海晴はその様子を見て自らを固く強張らせてしまう。

「海晴……」

袖を引かれ、ようやく妻の存在を思い出した。

「志歩、おやすみ……」

人前でキスをするということを嫌悪していた二人だったが、そんなことは消し飛んでいた。
海晴も自分の所有権を主張する、嫉妬に満ちたキスを妻と交わす。

「じゃあ……ね……」
「また、明日……」

先に舌を引っ込めたのは志歩だった。
引いた唾液の糸が海晴の名残惜しさを物語っていた。

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