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他人の妻、親友の夫
第10章 自分の妻、自分の夫
「なにからお話しするべきか」と冷静に応え、目を閉じた。
秋彦はそのまま想い出の糸を手繰るようにゆっくりと語り出す。
彼の両親が幼い頃離婚したこと、母親の情夫がやって来たこと、そして母がその男に被虐的に抱かれていたこと。
その全てが驚きで、耳を覆いたくなるほど衝撃的だった。

「妻にもこのことは話したことがないんですけどね」

それが締め括りの言葉だった。

「そう、だったんですか」

激しい動悸を感じながらそう答えるのが精一杯だった。

「あなたを縛ったり叩いたりする時も、実は興奮するんです。理依さんの感じる姿を見るのと同じくらいに。きっとあの男の変態性が私にも伝播したんでしょう」

秋彦は自分を貶めるように嗤った。
どんなに苦しくても客観的に自分を見ることが出来る。
学者らしい残酷な冷静さに胸が締め付けられた。

そして志步は彼の心の大きな闇を推測した。
その闇が勃起不全の根幹であるならば、崩せるのは自分しかいない。
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