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他人の妻、親友の夫
第12章 エピローグ
そこからは空白の二ヶ月で起こった出来事を話し合った。
新しい仕事の話や近所のパン屋の話、異常な患者の話やダンスを辞めたときの話など、他愛のない会話だが、話しても話しても尽きなかった。
気がつけば二時間が過ぎていた。

「そろそろ、行こうか?」

伝票を持って海晴が立ち上がる。

「うん」

名残惜しい気持ちを抱えて志步も立ち上がった。

「じゃあ、また」
「身体壊さないでね」

喫茶店を出ると日差しが眩しくて、少し目を細める。
遠離っていく夫の背中を見送りながら、志步はしばらく動けなかった。
まだ完全に元通りに戻っていない関係だが、必ずまた二人で暮らせるときは来る。
このもどかしい寂しさが二人の絆を強くしてくれていると信じていた。
傷付け合いながら、本音をぶつけ合いながら、見苦しいほど苦しみながらも理解を深めていく。それが夫婦というものなんだ。志步はそんなことを思う。
今すぐ追い掛けて抱き締めたい背中から目を逸らし、志步は踵を返して歩き始めていった。



~他人の妻、親友の夫 終~
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