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他人の妻、親友の夫
第6章 超える一線
温泉の良し悪しなどまるで分からない海晴だが、しょっぱいようで当然べたつくことのないこの湯は効能がありそうだなどと感じていた。

奥の方に行くと胸まで浸かるほど深いところがあった。ジェット水流が背中に当たって心地いいがあまりそうしていると本当にのぼせそうだったので露天の方へと移動する。

湯治客は西洋の観光客が多く、異国情緒を満喫していた。
しばらくすると露天風呂に秋彦もやって来る。

「また捲き込んでしまってすいません……」

彼は海晴にしか聞こえないくらいの声量で謝った。

「あ、いえ……まあ……」

その話題を避けていたが、直接切り出されては何も答えないわけにもいかない。
とはいえなんと返すべきなのか、皆目検討もつかなかった。
辺りを見るが年老いた西洋人が瞑想するように目を閉じてるだけだった。


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