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よくある恋愛モノ 〜おあずけ〜
第7章 さようなら
「これは結婚のお祝いです。……ほんの気持ちですが」
「……そう、ありがとう。ご馳走になったわ」
そのまま荷物をまとめ、
「さようなら」
彼女は去っていった
もう二度と会うことはないのだろう
「……ッ」
陸は額に手を当て、顔を歪めた
“赦して下さい……”
貴女に惹かれてしまった
貴女の黒いベールを、知らないうちに剥いでしまった
貴女に希望の光を見せてしまった
“それなのに……”
僕は逃げました
ベールに気付いた、そのときに−−−
“貴女の真の姿は?
貴女の望むものは?”
そんなこと、分かり切っていたのに。
いや、見え過ぎたから不安になったのかな
僕も貴女も、同じですね
「…赦して下さい……」
貴女のベールを剥いで
貴女の心を犯し
貴女の前から逃げました
貴女はきっと、奪われることを望んでいたのに。
“ゆかりさん”
それでも貴女は笑うんですね
今貴女を包むのは
怒り?
悲しみ?
赦して下さい
臆病な僕を
どうか、赦して−−−
ガチャ
バタン
「陸にぃ!」
「やっと帰ったか」
陸の遅い帰宅を弟妹たちは急いで出迎えた