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よくある恋愛モノ 〜おあずけ〜
第7章 さようなら
陸は思わず大声を出した
“こんな時まで……茶化さないで下さい!”
「あなたはそんな古典的な女性像に縛られる人じゃない。
それに、研究はどうなんですか?
実験している時のあなたはすごく生き生きしてて……魅力的だ」
「そうね……」
陸の最後の言葉に微笑み、ゆかりはおもむろにデザートを食べだした
陸もそれに倣い、異様な静けさが二人を包む−−−
カシャン
ようやくフォークを置くと、紅茶を一口飲んでゆかりは切り出した
「確かに実験は私の生き甲斐だわ。
でも……私はもう一つ、生き甲斐を喪ってしまったの」
陸はゆかりを見つめる
“ゆかりさん……言わないで下さい”
「それは……」
“お願いです……”
ゆかりはふっと笑った
「分かっているんでしょう」
陸は固く瞳を閉じた
「ゆかりさん、僕は……」
シッ
ゆかりは彼の唇に人差し指を押しあてた
「同じ人に二度も振られたくないわ」
ゆっくりと指を離し、鞄から財布を取り出した
「……いりません」
差し出されたお札に首を振る
「でも、ここに誘ったのは私なのよ」