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社内恋愛のススメ
第5章 雷雨
怖かった。

情けなかった。

まさか30近くになって、こんな思いするとは夢にも思わなかった。

危機意識が足りないと言われたらそれまでだ。

でも、その危機意識というものは、私が、いい歳して自意識過剰にはなるまいと、敢えて目を向けなかったものでもあって。

こと同僚を相手にすると、その線引きは私にはとても難しいものだった…


駅に着くと、人と目を合わせないように足早にお手洗いに駆け込み、鏡で顔を確認する。

マスカラが取れかけて酷い顔だ。

ティッシュで涙を抑え、ポーチから綿棒と乳液を出して目元の黒い汚れだけを拭き取る。
ポイントファンデをコンシーラーのように新しい綿棒で目元につけて、崩れを誤魔化し、お手洗いをでた。

夜遅くなると、電車の本数も少なくて。
駅で電車を待つ間も。
電車に乗って最寄り駅までの15分弱の時間も。
駅からマンションまでの5分程の道も。
今まで怖いなんて思ったこともなかったのに…

今日は、怖くて、心細くて…
泣きそうだった。


北川さん…

北川さんに会いたい………




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