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瞳で抱きしめて
第3章 どこまで落ちていくの?
樹理さんの家に入り浸るようになってからあっという間に時間は過ぎ、のんびり過ごしているつもりだった夏休みもあっさりと過ぎ去ってしまった。


新学期が始まり、制服も夏服から冬服へと変わり、世間はすっかり受験シーズンに突入していた。



「あれ?意外と近場にまとまったんだね」



第三志望まで書いた進路希望の用紙を見て、真理さんが言った。


明日提出するその用紙に並んだ高校の名前は、三校ともこの地元の駅から30分程度で通える場所だった。



「そしてどこもなかなかの高偏差値!さすが~」


「前は下宿でもしないと通えないくらいの場所にするって言ってたのに。…よかったの?」


「いっ…いいんです」


樹理さんの言葉に、少し詰まったのは照れたから。



そう、俺はあなたの側にいることを優先したのだ。

地元の知り合いや、父親から離れることよりも。



「あいつらは…頭は良くないから同じ高校になることはありません」


ここ最近、全く顔を会わせることすらなくなったいじめっこ達を思い浮かべながら付け足した。



その言葉を聞いて、樹理さんは表情を緩める。


「そっか。よかった」


「…」



その笑顔がいけないんだ。



その笑顔をずっと近くで見ていたいと思ったから。



側にいると、胸が熱くなるような甘い苦しさがあるのに心地よい。


不思議な刺激だった。


すっかり癖になってしまったその刺激に、俺は囚われてしまっていたのだった。
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