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瞳で抱きしめて
第3章 どこまで落ちていくの?
今日は大晦日。


店は昨日から休みで、昨日今日は樹理さんが家庭教師だった。


樹理さんは俺がたった今解き終えた2年分の過去問題の採点をしている。


俺はやることもなくなり、斜向かいに座る樹理さんを見つめていた。



長い睫毛。

ほんのりと赤く色づいた唇。

一応お客さんを相手にする仕事だからと、いつも薄く化粧はしているようだけど、今日もしているのだろうか。


触れて確かめてみたかった。



「…文句なし」


採点を終えた樹理さんはそう呟くと、パチンと赤ペンのキャップを閉める。



「どうかした?」


目線を上げた樹理さんと、思い切り視線がぶつかる。


今の今まで彼女をずっと見つめていたのだから当然だ。


「あ、いや」


やけに恥ずかしくなって目線をそらす。


俺は隙さえあればいつも樹理さんを目で追っている気がする。


「どうでしたか?」


もしかしたらとっくに俺の気持ちに気づいているのではという恥ずかしい推測を打ち消すように、俺はたずねる。



「完全合格ライン。全く危なげない。もうこのまま受験当日まで寝てても大丈夫なんじゃない」


「さすがにそこまで油断できませんよ」



ふふふ、と樹理さんは笑った。

彼女が楽しげに笑ったのが嬉しくて、ついテンションが上がる。



俺は樹理さんを誘った。



「散歩しませんか」
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