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瞳で抱きしめて
第5章 新生活
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「樹理っ!なんで?!」
「…!ごめん…っ!」
「ごめんじゃ分からないだろっ!なんでだよ?!」
「ごめん!もぅ…もう無理。もうこんなのいやなの…耐えられない…っ!」
あんなに泣いたのは、物心ついた頃から今の今まで、あの時だけだった。
17歳の秋だった。
付き合っていた彼氏に突然一方的に別れを告げたのは、私。
理由を問われて、はっきり答えられなくて、追求されてしまいには逆ギレしてギャン泣き。
相手からすれば理解不能なフラれ方だっただろう。
だけど、あの時の私もいっぱいいっぱいだったのだ。
あの時の私は、未熟で、弱くて。
だからあんな風にしか終わらせられなかった。
苦すぎる記憶だ。
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「謝ることないよ」
頬に触れられ、現実に引き戻される。
目の前の光は、やっぱりちょっと寂しそうな顔をしている。
それでも私に笑いかけた。
「覚悟はしてたし」
もう一度、深く私に口づけてから光は言った。
「樹理さん、大好き」
そして、再び唇を沈めた。