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瞳で抱きしめて
第5章 新生活


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「樹理っ!なんで?!」




「…!ごめん…っ!」




「ごめんじゃ分からないだろっ!なんでだよ?!」




「ごめん!もぅ…もう無理。もうこんなのいやなの…耐えられない…っ!」





あんなに泣いたのは、物心ついた頃から今の今まで、あの時だけだった。



17歳の秋だった。




付き合っていた彼氏に突然一方的に別れを告げたのは、私。



理由を問われて、はっきり答えられなくて、追求されてしまいには逆ギレしてギャン泣き。



相手からすれば理解不能なフラれ方だっただろう。




だけど、あの時の私もいっぱいいっぱいだったのだ。



あの時の私は、未熟で、弱くて。



だからあんな風にしか終わらせられなかった。



苦すぎる記憶だ。




━━*━━━━*━━*





「謝ることないよ」




頬に触れられ、現実に引き戻される。



目の前の光は、やっぱりちょっと寂しそうな顔をしている。



それでも私に笑いかけた。



「覚悟はしてたし」




もう一度、深く私に口づけてから光は言った。




「樹理さん、大好き」




そして、再び唇を沈めた。
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