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3つのジムノペディ
第3章 レント(ゆっくり)で、いたましげに

都心の、大使館が点在するエリアにある昔ながらの屋敷をご実家に持ち、親御さんをはじめとした親族は、由緒ある家柄の系統だったようだ。
しかしその資産にはおぼれることなく、キチンと職を得、自立した人だった。それだけ恵まれた環境にいながら、そこに甘えることなく自らに依って立つ姿に、こころ惹かれのだと思う。
詳しく聞いたわけではないけれど、ぼくとあまり変わらない年のフィアンセが、いまは海外に長く出かけているようだ。
年上の男性に、どうしようもなく弱いのだ、と彼女がいつか、漏らしたことがある。ひょっとしてファザコンなのかもしれない、と。
極めて厳格で、現代ではありえないほど封建的な家父長制度のムードを持つ家庭で育った結果、ついつい年上の男性に依存してしまう傾向があるのだ、と背筋を伸ばして酒を飲みながら、彼女はそんな風に告白した。
見た目はいささか幼い感じのする彼女だけれど、その心にはしっかりした芯のある、実に魅力的な女性だった。
ホテルの部屋の鍵を閉め、ゆっくりと彼女を抱いた。
髪を撫で、そっとくちづけし、おもむろに官能の扉を開いた。
触れば切れそうなほどシャープなラインの、黒いワンピース。
背中のホックを外すと、驚くほどキメの細かい肌が現れた。
人差し指を当てて、ゆっくりと背骨をたどってゆく。彼女の身体が小さくさざめく。
ブラジャーのホックを外し、そのままウェストまでワンピースのジッパを下ろしてゆき、その肌を愛でる。
彼女は両手を顎にあて、目を閉じて小さく、硬くなってゆく。
最初それは、緊張なのだと思っていた。
消して焦ることなく、ゆっくりと、ぼくは彼女を開いていくつもりだった。
しかしその小さな違和感は、行為が進むにつれ、大いなる段差として彼女の身体に現れた。
だいじょうぶ?、と聞くことがためらわれた。
それは無粋だろうと思いつつ、しかし。
どうしたのだろう、何を恐れているのだろう。
その段差を気持ちとして理解した時、彼女の身体を探る指が、凍った。
彼女にも、それがわかった。

