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3つのジムノペディ
第3章   レント(ゆっくり)で、いたましげに

額に玉の汗をかいて、彼女はぼくのくちづけに答えてくれる。
潤いきったヴァギナからは、ぼくを激しく求める渇いた声が聞こえる。
指を絡めて。
身体を重ねて。
思えば最初に彼女のことをスパンキングしてから今日までが、長い長い前戯だった気がする。
深く、彼女の中に入る。長い時間が持たない。いままでが長すぎたんだ。


互いに性器を差し込みあった瞬間、しびれるような感覚がふたりをつつんだ。ぼくにも、彼女にも、それがわかった。ぼくたちは、快楽を求めるのとは別の目的で、その時身体をあわせていた。言葉にできない感情が、あふれるように胸に迫る。性の昂ぶりとともに何故か、涙がポロポロとこぼれた。彼女の肩に顔を埋めながら。彼女も強く、ぼくを抱き締める。
互いの名前を呼び合って、激しく、昇りつめる。

瞬間、ジムノペディが消えた。
そしてぼくたちは、絶頂を迎えた。


「ねぇ?」、と彼女に声をかける。
真夏の午後のホテルのロビーは、白く透明な光線がさして、夕暮れにはまだ早い。
知らない人々の静かなざわめきが心地良い。
感傷などひとかけらもなく、ぼくたちは、終わりを迎えた。
これで終わったんだと、互いが心の底から理解しあった。

「クルマを買うときはさ、」と、ぼくは切り出す。彼女は柔和に微笑している。逆行になった午後の光が彼女の輪郭を彩り、まるで女神のように見える。
「メルセデスのスポーツタイプの2シーターにしなよ。ボンネットが長くて、エンジンが一番強力な奴」
「どうして?」
ぼくは笑った。
そんなの決まってるじゃないか。
「そんなの決まってるじゃないか。君に一番良く似合うからだよ」

からからと顎をのけぞらせて笑うひとには、もう少女の面影は残っていなかった。

ジムノペディは、もう、聞こえない。








fin
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