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愛し愛され
第2章 寒山寺の鐘の音



最初のあわただしくもいやらしいセックスが終わって、ふたりでシャワーを浴び、ベッドに戻る前に彼女は携帯をチェックする。二通のメイル。一通目は上の子。可愛らしい彼のお土産のリクエストを頭の中のメモ帳に書き込む。二通目は夫。こちらはタイトルと発信者だけを見て、本文はここでは読まないことにする。自分がいかに無邪気な女でも、恋人との情事の部屋で、夫のメールは読めない。



ベッドに入った彼は、身体を伸ばして、その肌触りのいい寝具を味わっている。

その背中に張り付くようにしてベッドに入ったさほ子は、彼の厚くて大きな背中に頬をつけ、その感触を肌に記憶させようとする。

彼がシーツの海の中で振り向き、甘い愛の言葉を囁く。その言葉だけで、彼女は何もかもを忘れることができる。ゆっくりと、彼の言葉と腕の中に身を溶かし、甘くやさしい二度目のセックスを味わう。


生きている、という実感がする。男から愛され、そしてそれと同じ量を、自分も男に与える。実にフェアで、そして気持ちがいい。そのためになら、どれだけ自分を磨いても惜しくはない。愛し愛されることこそ、自分自身の主たる栄養源なのだと、さほ子は思う。



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