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愛し愛され
第2章 寒山寺の鐘の音
一時間ほどでふたりとも汗をかいて行為を終え、もう一度、今度はひとりずつ、シャワーを浴びにゆく。先にバスルームから上がったさほ子が、ベッドサイドに座ってショーツをつけ、ブラジャーのストラップに肩を通す。
ふと目が止まり、ドレッサーの鏡に写っている自分に気づく。
二の腕も、脇の下も、まだまだ肉のたぷつきはない。髪のボリウムも、肌の張りも申し分ない。あの人のためでなく。自分が良しとする自分でいることが重要だと思う。そのレベルをクリアし続けることが、結果として、彼を繋ぎとめるのだ。下らない女性誌の提案する流行でなく。テレビが騒ぎ立てる、二流以下のスタイルでなく。自分自身が定める、狭く高いエリアの中に、自分を置きつづけることが重要だ。外見も。内面も。自分を愛せるようになってはじめて、誰かを愛せるのだから。誰かに愛してもらえるのだから。
シックな黒い、ヒップハングのタンガショーツ姿のまま、さほ子はしばし、自分の身体を点検する。その時の怜悧な視線を知る人は、恐らくどこにもいないだろう。