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愛し愛され
第3章 腰元のVサイン
出逢ったのは、きょ年の暮れのパーティー。
派手好きな主催者の仕込みは、新市街のホテルのイベントスペースを借りて行われた。ベイスにいる駐留軍のジャズバンドが入り、こぎれいななりをしたゲストが、それぞれにカクテルグラスを持って、にこやかに談笑していた。
入り口のドアの脇でひとり、不機嫌そうな顔を浮かべていたひとが、嫌でも目についた。まるでムーミン谷のミーみたいに。重い赤ワイン色のドレス。白いデコルテの肌が、鮮やかなコントラストだった。そしてなにより、その印象的な愚図り顔。
特に下心などなく声をかけてみると、その不機嫌そうな顔にぱっと華やかな笑顔がひろがった。
年若い彼女は、この集まりにも知人が少なく、またパーティーという席での振る舞い方も良くわかっていなかったのだ、と話してみて知った。博人は本来親切な人間だったから、あかるいおしゃべりで彼女の心をほぐし、そして笑わせた。彼自身にしてみても、こんなに年若い女性と話しをする機会など早々あるものではなかったから、とても新鮮な気持ちで会話を続けることができた。